ソン・ウォンピョンの「アーモンド」は失感情症の少年を主人公にした韓国の青春群像を描いた小説

まだ4時少し過ぎた時間でした。さすがにまだ暗く、リビングから街路を見下ろすと、雨に濡れた路を外灯が照らし出していました。

それでも空は青っぽくて、漆黒の闇というのでもなく、不思議な時の間にあり、もう30分もしたら辺りは白い朝を迎えるのでしょう。

もう一度ベッドに入り、次に目が覚めた時には、7時を大分回っていました。

ゴミ袋を下げて外へ出ると、雨はほぼ上がっていました。

今日の名古屋の予報は、曇り、最低23度、最高28度、風速0.28m/s、湿度94%、午後から図書館へ行く予定です。

ソン・ウォンピョンの「アーモンド」を読み終えました。

本屋大賞の翻訳部門1位を受賞した小説で、背景に現代の韓国社会や文化も描かれています。

失感情症の少年ユンジェを主人公にした、愛と友情をテーマにした小説です。

扁桃体が小さいと、感情の中でも恐怖をあまり感じることができないという特殊な疾患を抱えた少年ユンジェの6歳から17歳の間に起きた出来事が物語られています。

第一部の文頭から、少年ユンジェの唯一の保護者である母親と祖母が暴漢にナイフで刺された事件があったことが描かれています。

表情の乏しい我が子に対して、普通の子のように、目立たぬよう、必死に教育しようとする母親と優しい祖母の愛に育まれて少年ユンジェは成長します。

そして、突然の殺傷事件により、祖母は死亡し、母親は意識が戻らぬまま植物状態になってしまいます。

少年ユンジェは、高校へと進学し、ある中年の男から、小さい頃行方不明になった子供の身代わりとして病床の妻に会って欲しいと頼まれます。

男は大学の経済学の教授で、実は行方不明の子供は見つかったが、重い病にかかった妻に会わせられる状況にないと謎めいた説明がなされます。

ユンジェは、教授の願いを受け入れ、病床の彼の妻に会いますが、しばらくして彼女は他界します。

ユンジュは、教授の行方不明になっていた実の息子ゴニ(本名イス)を同じ高校の転校生として見ることになります。

初めて見るゴニは荒んだ少年で、ユンジュはゴニに突然殴られたり、色々ないじめを受けることになります。

しかし、恐怖もなく何の感情もわかないユンジュは、いくらいじめを受けても顔色ひとつ変わりません。

ある日、放課後ユンジュが母親から受け継いだ古本屋の店先にいると、ゴニが突然現れました。

そこからユンジュとゴニの少々荒っぽくはありますが、友情が育まれていく話が語られていきます。

そして、ユンジュと同級生の女子高生ドラとの淡い青春らしい恋も描かれています。

いくつもの脚本を描いて好評を得た作家の作品らしく、最後はハッピーエンドで終わる韓国の青春群像を心優しく描いた小説でした。