宮下奈都の「羊と鋼の森」は森で育った青年がピアノの音に魅せられ調律師として成長していく物語

3月7日の日曜日、朝から生憎の曇りで、今にの降ってきそうですが、何とか大雨にはならなかったようです。

名古屋の天気予報では、小雨、最低7度、最高11度、風速0.56m/s、湿度51%、雨が降りそうだと外へ出る気も起きません。

宮下奈都の第13回本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」を読み終わりました。

主人公外村は、高校生のときのある日、たまたま学校へ訪れた調律師板鳥が調律したピアノの音に魅せられて調律師になることを決心します。

外村は本州にある調律師養成のための専門学校で2年間学び、北海道へ戻って、板鳥の勤めている楽器店に就職します。

そこで同じ調律師の先輩である板鳥をはじめ柳や秋野、顧客の双子たちとの出会い関わり合いを通じて、調律師としての経験を積むとともに、人として成長していきます。

華麗なピアノ演奏の中で重要なパートを担うにも拘わらず、普段光をあてられることの無い調律師という仕事師を主役として物語られています。

女性作家らしく、外村の育った森の美しい描写や外村が成長していく姿が優しく温かく描かれていきます。

先輩の柳がライブハウスの耳をつんざく音の中でロックバンドのドラムを演奏していることが外村を驚かせます。

そしてメトロノームの音に心の安らぎを求めるなど、全く裏腹な神経質な側面を柳の婚約者から聞かされさらに驚きます。

いつも辛辣な物言いをする秋野が、調律は相手を見てするといいと外村に言います。

しかし柳に言われて秋野の調律に同行し、言葉とは裏腹にその正確で無駄のない動きに目を見張ります。

そんな秋野が、かつてはピアニストを目指していたこと、板鳥の調律でピアニストになることをあきらめ調律師になったことを外村は知ります。

こうして周囲の人々の、人となりが浮き彫りにされていきます。

外村が初めて調律に失敗した顧客であり、また外村に親しみを感じてよく相談に来店していたのが双子姉妹でした。

その姉がピアニストになることを決意し、ピアノが弾けなくなってしまった妹が調律師になることを決心するエピソードが語られています。

最後は先輩の柳の結婚式で、双子の姉が弾くピアノを外村が調律する話でエンディングとなりました。