今日は9日土曜日で、朝から明るい日が射して、まるで祝福されているようです。
名古屋の天気予報は、晴れ所により曇り、最低-2度、最高4度、風速3.33m/s、湿度38%、気温が低いのに驚きますが、コロナ禍でもあり、家の中でじっとしているのが吉です。
今村夏子の「こちらあみ子」を読んだのですが、奇妙な読後感のある小説です。
三人称で書かれた小説という解説もありますが、少し分かり難いです。
一人称は私を含む人、私或いは私たち、二人称はあなたを含む人、あなた或いはあなたたち、それで三人称は一人称、二人称以外すべての名詞ですが、益々分かり難くなってしまいました。
主人公あみ子は、一見発達障害の女の子のようですが、小説の中でそのように書かれてはいません。
あみ子は人の気持ちを推し量ったり、場の空気を読んだりすることが出来ません。
まさに天然かつ自由気ままに人に接し、ほとんど学校へも行かず、毎日好き勝手に生きている女の子です。
変わり者の彼女の言葉に丁寧に反応してくれる者は少なく、トランシーバーで一方的にしゃべっているような情景が描かれています。
従ってあみ子は、人との関わりで、悩むことも、苦しむことも無く、ストレートに表現し行動するため、彼女が意識しないうちに、流産した継母の心をこわしてしまうことになります。
あみ子には前歯が3本ありません。
小さいころから憧れていた同級生の男の子に、中学校の保健室で授業をさぼっていた時にパンチをくらって3本の歯をなくしました。
それは、小学生の頃、あみ子がチョコレートを舐めとってしまったチョコレートクッキーをその男の子に食べさせたことが、その保健室で男の子に分かり、彼の怒りのためにそのようなことになってしまいました。
継母が病気で入退院を繰り返していることも、あみ子だけが祖母の家に引っ越すことも、あみ子はすべて後になってから知りました。
あみ子は中学卒業とともに祖母の家で農業を手伝うことになります。
人と上手く接して生きていくことができないあみ子にとって、田舎は安住の地というべきでしょうか。
主人公のあみ子に感情移入することもなく、あみ子の周辺に起きる数々のエピソードを情景のように眺める物語で、ここに三人称の立場で書かれた小説と言われる由縁があったのかもしれません。