映画「ムーンライト」は黒人社会の空気感を描いた異色作品

今日は月曜日、朝から昼過ぎの日の有るうちはとても暖かいのですが、窓を開ければさすがに冬の冷気に身が震えます。

今日の名古屋はどのような一日だったか、天気予報を覗いてみると、晴れ、最低9度、最高17度、風速1.11m/s、湿度49%、なかなかの好日でありました。

前々から気になっていた映画「ムーンライト」をネットのGYAOで観ました。

出演者がほとんど黒人で、白人はエキストラ以外ほとんどで出てこない異色の映画です。

主演のシャロンという気の弱い少年が、少年期、ティーエンジャー期、成人期と成長していく度に演ずる俳優も変わっていきます。

シャロンは母一人子一人の貧しい母子家庭で育ちます。

少年期、シャロンはファンというコカインの売人に可愛がられます。

ファンはキューバ出身で、いじめられっ子のシャロンに、子供の頃の自分の姿をみていたのかもしれません。

ファンは小さいシャロンに、最初の人類はアフリカで生まれ黒人だった、だから黒人は世界中に居る、それで俺はキューバからやってきたと言います。

そして、ビーチの海で、険しくうねる波間に浮くこと、手を動かして自力で泳ぐ方法を教えます。

シャロンに向かって、自分の道は自分で選ばないといけないとも言います。

シャロンはファンとファンのガールフレンドのテレサに、夕食を食べさせてもらい、泊まっていくこともあって、次第に心を開いていきます。

シャロンの母親はコカイン中毒で、感情の抑揚が激しく、コカインを買う金を稼ぐため売春をする荒んだ生活を送っていました。

そんな母親が街路で男とコカインを吸っているのを、ファンが諭すこともありました。

ファンの車のダッシュボードには、小さな王冠が乗っています。

パームヤシの連なる西海岸特有の乾いた白っぽい風景の中を、大きなアメ車で走る光景は、貧しい黒人社会の空虚感を感じさせます。

小さなシャロンが、大きな図体のファンに向かって、母親のポーラにコカインを売っているかと聞きます。

ファンは認めてうなだれ、シャロンは一言も言わず去っていきます。

小さい子供というのは、大人に対して天使の存在なのかもしれません。

ティーンエイジャーになったシャロンは、ファンが死んだ後もテレサに優しく接してもらっています。

やせ細って、いかにもひ弱なシャロンは、学校で相変わらずいじめを受けています。

いじめグループに呼び出され、そのリーダーにゲームだと言ってはめられたシャロンの唯一の親友ケヴィンに、殴り倒され、心が大きく傷付きます。

シャロンは翌日、いじめグループのリーダーを教室で後ろから、椅子で殴り倒して逮捕され少年院へ送られます。

貧困と学校でのいじめ、実に陰湿な世界に生きるシャロンです。

大人になったシャロンは、ティーンエイジャーの頃と全く容貌が変わります。

筋骨隆々として、一見してマッチョマンに変貌しています。

彼が少年院へ送られて出所してから過ごさなければならなかった厳しい環境からか、彼はファンと同じようにコカインの売人になっています。

ある日かつての親友ケヴィンから電話をもらい、シャロンは彼の働く食堂へ出かけて行きます。

ケヴィンはシャロンのあまりの変わりように驚きます。

ケヴィンは一度結婚して離婚したことを話し、可愛い一人息子の写真をシャロンに見せます。

いくら働いてもほとんど稼げない今の料理人の仕事だけれど、かつてのように心に不安を抱くことが無いとシャロンに言います。

そしてケヴィンは、かつてティーンエイジャーの頃に、シャロンとの友情を裏切ったことを詫びます。

シャロンは相貌は逞しくかつての面影はありませんでしたが、目は優しく静かで心は今でもナイーブで繊細なままでした。

シャロンのケヴィンへの想いは湾曲した複雑なものでしたが、かつてのティーンエイジャーの頃から変わらないままでした。

映画「ムーンライト」は米国の黒人下層社会の、乾いた悲しさと、そこに生きる人々の愛を感じさせる独特の空気感を描いた異色の作品でした。