朝起きたら、思いのほか天気は良く、リビングの南窓際は明るく日がさしていました。
今日は、妻が週一回実家の年老いた両親の様子を見に行く日です。
午前中にそそくさと身繕いして、出て行きました。
私はしばらく新聞を読み、ネットでニュースをチェックしていましたが、図書館のマイページを開いたら、私と妻の予約した本と雑誌が計5冊届いていたので、これは受け取りに行かなければいけないと思いました。
明日月曜日は図書館が休館ですから、今日行かないと火曜日になってしまいます。
と思いつつ、腰を上げようとすると、陽だまりの中に心落ちしたように、何となく億劫に感じられます。
昨日、思い立ったらすぐに動けるように心がけないといけないとしたはずなのにと思い、振り払うようにして立ち上がりました。
シェフレラの重い鉢を外に出し、空になった牛乳のパックに入れた水をやり、外出用のバッグの準備をしました。
外へ出ていくためには、ただそのバッグを肩から下げて出て行けば、それで事足ります。
バッグにはいつでも財布から何から必要な物はすべて入っています。
電源類を抜き、戸締りをして、すぐに帰ってくるつもりで、扉を出ました。
午後の2時頃には戻ってくることができるだろうと思いました。
エレベーターを使わずに階段をトントンと降りて、エントランスから外へ出ました。
何のストレスも無く、体が丈夫で、足が自然と意識しなくとも前へ前へと進んでいきます。
バス停までくると、黒っぽい恰好をした一人の若者が立っていました。
時間を確認すると、今しがた行ったばかりのようでした。
仕方ないので単行本を出して読みだすと、間もなくバスが思いのほか早くやってきました。
どうやら、都合よくも、遅れてやってきたようです。
日曜日の昼日中、バスはがらがらに空いていて座れました。
後から少し小太りの女子高生が乗ってきて、シルバーシートにどっかと座りました。
単行本に目を注ぐと、外の世界は一切見えなくなります。
降り注ぐ日差しも、流れる外界の世界も、目の前から閉ざされ、運転手の駅到着の声で初めて周囲を振り仰ぎます。
バスの後方から、日曜日の装いで若い女性が何人も降りてきます。
バスを降り、地下を通って、デパートのエスカレータを使って1階まで上がり、入り口の重いドアを押して外ででます。
やはり休日とあって子供を連れた家族連れやら、買物客で街は華やいでます。
街路を辿る視界の中、目で見える光景が私の住む世界のすべてです。
右から正面そして左へと首をまわし、青い服を着た小さな男の子が3輪車に乗って横断歩道を母親について渡っていくのを目で追い、正面の草ぶき色のジャンバーを来て自転車に乗った男の背中を見ながら、信号が変わるのをじっと待ちます。
多分1年前2年前、こうして図書館への路を歩き始めた4年前から、同じ光景を見てきたように思います。
ダウンジャケットを着込んだ頭髪の白い老人がゆっくり歩いていました。
ゆっくりと自分のペースで歩いていけばよいと思いながら、老人の傍らを通り過ぎて、何年か先の自らの姿を重ね合わせます。
図書館の階段を登って、入り口のドアを通り、中へ入ってさらに階段を登り詰めるとさすがに、息が切れます。
カウンターが3つありましたが、前の人の対応が長引いていて十数分程待つ間に、後ろに10人程長い列ができました。
暖房が効き過ぎているのか、待つ間になぜか暑くて、額に汗が浮き出てきます。
マフラーを外し、コートの前を開放してもまだ暑く、ハンカチで額をぬぐう様子は、分厚いダウンジャケット姿にそぐわないしぐさです。
日曜日の図書館は子供連れの親子が多くて、カウンター横に児童図書コーナーがあるので、小さな男の子や女の子の姿が目立ちます。
ようやくカウンターが空いて、予約の本と雑誌5冊をバッグに入れるとパンパンになって、ずしりと肩に重さが感じられます。
今日は新聞・雑誌コーナーにも寄らず、そのまま図書館を出てきました。
来た径を逆に辿って、家へ帰ってきた時は午後の3時を過ぎていました。