佐藤究の「テスカトリポカ」はアステカの残酷な神々の伝説を背景にした小説

5月9日、火曜日、5時に目が覚めトイレへ行き、再び寝て6時に起きて、ゴミ出しをしました。

駐車場を通って、路へ出ようとすると、パジャマのようなグレーのジャージを着て眼鏡をかけた太った50代くらいの男が通り過ぎました。

初めて見る男だったように思いますが、集積場所には大きなゴミ袋が一つ網をかけられていました。

ゴミを出してから、今日は右手の少し登り勾配の路を走りはじめました。

住宅街の中を通って、公園の周りをまわり、また住宅街の狭い路に入り込み、ぐるりと回って、急坂道を足踏みするように上がってきました。

今日の名古屋は、曇り所により晴れ、最低12度、最高22度、風速1.11m/s、湿度58%、久しぶりに車を洗いに行こうかと思っています。

佐藤究の「テスカトリポカ」を読み終えました。

一旦読み始めると、中々止まらなくなってしまうほど、変化のある展開が魅力的な小説でした。

両親を殺してしまったため少年院へ送られたコシモは、出所する17歳になっても、出所後の引受先が決まらないため更生保護施設に送られて、特別調整者としての日々を過ごしていました。

木工細工で類まれな才能を発揮するコシモを雇いたいという企業主は何人かいましたが、コシモの罪状、院内で重傷者を出した傷害事件の話を聞くと、瞬時に態度を換えました。

ある日、コシモを面接したいという川崎市にあるアクセサリーやナイフを作っている工房が現れました。

コシモは、面接を受け、採用されました。

それは、バルミダが、末永と始めた心臓の臓器移植ビジネスで亡くなった子供の骨を加工して、海外に売るビジネスを始めるために雇ったペルー人と日本人の混血、パブロが一人でやっている工房でした。

コシモを大型バン・アルファードで迎えにきたのは、矢鈴でした。

パブロは2メートル2センチで、百四キロのコシを見て驚きます。

コシモはパブロの作り出した美しいカスタムナイフに夢中になって見入ります。

こうして、コシモはパブロのたった一人の弟子として、工房で働き始めます。

バルミダは、彼のために働くアステカの戦士のような殺し屋(シカリオ)を養成するため、射撃訓練に適した自動車解体場に目を付けました。

自動車解体場のオーナー社長の宮田は、野村のコカインの客でした。

バルミダは、自動車解体場で働く若者であった伊川徹=チャターラ31歳、身長178㎝、体重154キロ、仲井大吾=マンモス29歳、191㎝123キロ、大畑圭=ヘルメット26歳、177㎝、79キロ、以上の3人を殺し屋候補生として選び出しました。

コシモは、パブロに頼まれて、自動車解体場で飼われている獰猛な大型犬ドゴ・アルヘンティーの餌として、牛の骨を届けに来た時に、犬の世話をしていた男に首輪を放たれ、犬に襲われます。しかしコシモは、飛びかかってきた大型犬を地面に叩きつけ、拳を振り下ろし素手で犬を殺します。

そのことを知ったバルミダは、コシモをファミリアにに引き込み、シカリオに加えます。

バルミダは、コシモから母親がメキシコのシナロアからやってきたことを知り、アステカの神々の話をします。バルミダは、コシモを特別な存在として扱いました。

バルミダはテスカトリポカのために行われる祝祭トシュカリの話をします。

トシュカリのために、一人の少年が選び出され、1年間最高の待遇を受けた後、自らすすんで神殿の供犠の石台に身を横たえ、自分の血と心臓を捧げる儀式の話をします。

バルミダは、コシモを含むシカリオたちを使って、NPO法人「かがやくこども」の代表理事の増山の属する暴力団仙賀組に敵対するベトナム系の日本人を中心とした麻薬密売人組織を襲撃させ壊滅させます。

末永は、NPO法人「かがやくこども」を使って集めた子供たちに「今日 たのしかったこと を かこう!」という表題で、日記を書かせていました。

その日記は、顧客となる富豪たちヘ、彼らの生物学的感傷(バイオセンチメンタルティー)を解消するために心臓移植手術後に渡されることになっていました。

日記は、受容者(レシピエント)とその家族は提供者(ドナー)のことを知りたがるというバイオセンチメンタルティーを満足させるアフターサービスとして提供されていました。

しかし、集めてきた子供たちの中で、一人「みんな ころされる」と書いた少年の順太がいました。

末永は、バルミダを通じて、稚拙な文字を書くコシモに、順太の話を聞いて、一日にあったことを日記として代筆をするよう命じさせます。

コシモが崔岩寺の地下のシェルターに何度か通ううち、順太になぜ日記に「みんな ころされる」と書いたのか尋ねると、「ちのにおい」と答えました。

それを隣室でモニターで観ていた、夏(シャ)は子供の直観力であったことを知りました。

バルミロは、装飾した髑髏の密売の金の流れから、末永がベトナムの新たな麻薬密売ルートのスポンサーになろうとしていることを知ります。

バルミロは、末永の裏切りに対して、今回入港している豪華客船で行われる心臓移植手術のために摘出される心臓を末永が摘出した後、シカリオたちに末永を殺させようとします。

末永は、バルミロのこの企てを、彼が雇っているハッカーを通じて察知していました。

末永が心臓を摘出する日に手術室へやってきたシカリオたちは、手術室の中で突然倒れます。

末永は、手術用マスクの下に酸素マスクを付け、酸素濃度を下げられたため酸素欠乏症に陥ったシカリオたちを見下ろしていました。

しかし、その中で、コシモ一人が倒れず、手術台に人工呼吸器を着けられ意識のない順太を助けようとします。

コシモはすべての力を振り絞って、ショットガンの引き金を引き、散弾は閉ざされたドアを破壊しました。

末永はコシモに殺され、コシモは左足に末永から受けた刺創で足を引きづりながらも順太を抱えて、その時シェルターにいた矢鈴に出口に案内させ、さらに外に止めていたアルファードを運転させてパブロの工房へ向かわせます。

パブロは、スマートフォンと現金をコシモに押し付け、川崎港に入港するコンテナ船に乗れと言って逃がします。

パブロは、コシモたちが逃げた後、やってきたバルミロによって殺されます。

自身がコカインを使っていたことから、川崎署へ駆け込むことに躊躇した矢鈴は、アルファードのアクセルペダルを踏み続け、橋の中ほど、車道と歩道を隔てる柵にぶつかって停止します。

やがてバルミロに追いつかれ、橋の上でコシモはバルミロに対峙して跳躍し、バルミロの頭上にアステカのマクアウィトルを振り下ろし、2人とも欄干を乗り越えて多摩川へ落ちていきます。

矢鈴と順太は、バルミロの乗ってきた車に乗り、東京へ向かいます。

3年後、沖縄のホームセンターへ安売り品をまとめ買いにきた母親が、8歳の娘と、並んで歩いていました。

2人は、パブロの妻と娘でした。

母親が、買い忘れたものを思い出して、娘を一人、車に残して店へ戻った時に、車が止まり一人の男が近づいてきました。

男は、パブロの娘かと訊き、窓の隙間から札束の詰まった封筒と、木彫りのペンダントを落としました。

ペンダントには「Koshimo y Pablo」と彫られていました。男はコシモでした。

小説の最後の章は、かつてリベルタが4人の孫たちに、毎夜、アステカの血なまぐさい神々の話を聞かせていた話で終わります。